4、トラフィック獲得の施策
これまで検索結果1ページ目に表示されやすいサイトが何故たくさんのトラフィックを集めることが出来るのかを分析してきました。
これらの共通点はそのままトラフィック獲得の施策として自社サイトに取り入れることが可能です。
トラフィックを増やすための9のステップ
トラフィックを増やすことを確実にするためには次のステップを踏むことが効果的です。
【トラフィックを増やすための9のステップ】
ステップ1
想定する訪問者を見込み客だけではなく幅広い層に拡大する
ステップ2
その幅広い層のユーザーがどのようなコンテンツ・サービスを求めているかを予測する
ステップ3
その予測に基づいてコンテンツ・サービスを企画する
ステップ4
その企画に基づいてコンテンツ制作・サービス開発をする
ステップ5
制作したコンテンツをサイトに掲載する(開発したサービスをリリースする)
ステップ6
掲載したコンテンツをユーザーに見てもらう(開発したサービスを使ってもらう)ための告知をする
ステップ7
どのくらいのユーザーがどのコンテンツを見たか(サービスを使ったか)を計測する
ステップ8
計測したデータに基づいて予測の精度を高める
ステップ9
ステップ1〜ステップ8を繰り返す
これらのステップを1つ1つ見てみましょう。
ステップ1
想定する訪問者を見込み客だけではなく幅広い層に拡大する
→ これは本書の第一章で解説したように、自社サイトを訪問するターゲット層を見込み客だけにすると母数が小さくなるので母数を最大化するために様々なターゲット層を想定するという態度を持つことがトラフィックの最大化に貢献します。
ステップ2
その幅広い層のユーザーがどのようなコンテンツ・サービスを求めているかを予測する
→ これも第一章で詳しく述べたようにそれぞれのターゲット層がどのようなコンテンツ・サービスを必要としているかを予測する事がトラフィックの最大化に繋がります。
ステップ3
その予測に基づいてコンテンツ・サービスを企画する
→ 各ターゲット層に向けて具体的に:
①どのようなコンテンツ・サービスを
②誰が
③どのようにして
作るのかを決定します。
ステップ4
その企画に基づいてコンテンツ制作・サービス開発をする
→ 社内の人材が制作・開発すべきコンテンツ・サービスは社内で、外部にアウトソーシングした方が良い場合は社外の人材が制作します。
ステップ5
制作したコンテンツをサイトに掲載する(開発したサービスをリリースする)
→ サイトにコンテンツがスピーディーに掲載出来るようにCMS(Content Management System)や独自システムを使うと良いでしょう。
ステップ6
掲載したコンテンツをユーザーに見てもらう(開発したサービスを使ってもらう)ための告知をする
→ ソーシャルメディアやプレスリリース代行会社の活用などをして社会に存在を認知してもらう働きかけが必要です。
ステップ7
どのくらいのユーザーがどのコンテンツを見たか(サービスを使ったか)を計測する
→ これは本書の第5章で詳しく述べるアクセス解析ログツールを活用するものです。コンテンツ、サービスのどの部分がユーザーに受け入れられて、どの部分が改善余地があるかをデータを見ることにより発見します。
ステップ8
計測したデータに基づいて予測の精度を高める
→ データを見て気がついたことを次の改善に役立てます。
ステップ9
ステップ1〜ステップ8を繰り返す
→ これらのステップを:
①誰が【適材適所の担当者の決定】
②いつまでに【年間計画と制作・発表の期限の決定】
③どのように【企画方法・開発方法】
④いくらの費用をかけて【費用の最小化と予算管理】
を決めて繰り返すことによりトラフィックを増やす取り組みを推進することが可能になります。
これらのステップを踏む以外に企業が取ることの出来る自社サイトのトラフィックを増やす手段としては次のようなものがあります。
系列サイトの活用によるトラフィック獲得方法
(1)外部ブログ
外部ブログは本書の第一章で解説してきたように自社サイトにリンクを張って見込み客を送客するのに有効なツールです。
自社サイトにリンクを張って見込み客を送客するには外部ブログ自体にアクセスを集めなくてはなりません。
外部ブログにトラフィックを発生させるには次のようなテーマの記事を書くことが効果的です:
①職場での出来事
②新聞記事、雑誌記事、本の感想
③TV番組、映画、YouTube動画の感想
④グルメ感想
⑤旅行の感想
⑥週末にしたこと、家族とのエピソード
⑦取引先の紹介
⑧同業者の紹介
⑨他社商品・サービスの感想(ポジティブな感想)
外部ブログはアメブロやライブドアブログ等で書くか、独自ドメインを取得してWordPress等のブログシステムで運営します。外部ブログのアクセスが増えてそこから自社サイトにリンクを張り、誘導出来さえすれば良いので何でも書くことが許されます。ただし薬事法等の法律に触れることは他社ドメインで書いても責任が生じるので避けなくてはなりません。
(2)オウンドメディア
本書の第1章で述べたように、オウンドメディアは「自社メディア」のことであり、自社サイト、自社ブログ、メールマガジン等企業が直接所有して自由に情報発信出来る媒体です。
しかし、オウンドメディアにはもう一つの意味があります。それは自社の見込み客が探している情報を予測して、そのことに関するニュースやコラムをコンテンツとして提供する自社保有のサイトです。
次の図は企業経営者を対象にサービスを販売する企業が、見込み客を集客するために運営しているニュースサイトです。
【 企業経営者を集客するために運営しているオウンドメディアの例 】
このニュースサイトには毎日4本以上の新しいニュースやコラムが追加されており、追加される度にFacebookページ等のソーシャルメディアで新着記事が紹介されリンクを辿ったユーザーがサイトを訪問するようになっています。
現在、国内外で企業がこうした見込み客に役立つ情報を無料で提供することだけに特化したサイトをオウンドメディアと呼び運営する事例が増えています。
このトラフィック獲得策のメリットは、自社商品の売り込みを一切せずに見込み客を集めることが出来ることです。そして集めた見込み客には広告という形や、スポンサーという形で営業情報だけの自社公式サイトにリンクを張り誘導するユーザー導線を構築することです。
デメリットは、オウンドメディアサイトに新しいコンテンツを追加する費用、つまりコンテンツ制作費と管理費が継続的にかかることです。
しかし、SEOをすることと、ソーシャルメディアを活用することにより低コストでオウンドメディア自体のトラフィックが獲得することが可能です。
特に、ニュースサイトとソーシャルメディアの相性は良く、FacebookやTwitterのユーザーの多くがニュースサイトのフォローをする傾向が高くソーシャルメディアを使って情報収集をしようとする見込み客を集客しやすい環境があります。
このためニュースやコラムを主体とするオウンドメディア運営の本質的メリットはソーシャルメディアユーザーを自社サイトに集客しやすくなることです。
(3)複数のサイトを1つのドメインに統合する
ほとんど労力をかけずに自社サイトのトラフィックを増やす方法として、別ドメインで運営していたサイトをトラフィックを増やしたいサイトのドメインに引っ越すという方法があります。
例えば、自社公式サイトの訪問者数が月間10,000人で、他のドメインで運営している専門サイトが月間5,000人の場合、専門サイトの全てのコンテンツを公式サイトに移動すれば合計15,000人の訪問者数になります。
複数のドメイン名を使って複数のサイトを運営している場合、訪問者数が分散してしまいますがこのように一箇所にそれらのサイトを集約することによりGoogleによるドメインの評価が高まりそのドメインで開かれている全てのサイトの評価も高まり一箇所に集約する前と比べて個々のページの検索順位が上がりやすくなるということが観測されています。
ことさら別ドメインでサイトを開く必要が無い場合は、このように複数のサイトを1つのドメインに集約するとドメイン全体のトラフィックが増えることになり検索順位アップに貢献することがあるので検討の価値があります。
【複数のドメインで複数のサイトを開いている例】
http://www.suzuki-sports.com(1,000人)
http://www.baseball-goods.com(300人)
http://www.volleyball-goods.com(150人)
http://www.ski-goods.com(500人)
http://www.snowboard-goods.com(600人)
【1つのドメインで複数のサイトを開いている例】
http://www.suzuki-sports.com/baseball/
http://www.suzuki-sports.com/volleyball/
http://www.suzuki-sports.com/ski/
http://www.suzuki-sports.com/snowboard/(2,550人)
広告によるトラフィック獲得方法
(1)リスティング広告
リスティング広告とは、検索エンジンなどの検索結果ページに掲載される広告です。特に、検索語と関連性の高い広告を選択して表示する広告のことで、検索結果の表示に合わせテキスト広告となっていることが多い広告です。(e-Wordsより)
リスティング広告はネット広告の中でも効果が高い広告です。その理由は、検索エンジンユーザーが明確に特定のキーワードで情報を検索してそのキーワードに該当する情報が検索結果の目立つ部分に表示され、その表示形態は「広告」というマークがついているものの極めて自然検索の情報と似通っているからです
SEOを学ぶ人が一度は疑問に思うのが「Googleやヤフーのリスティング広告を買うと自然検索の順位も上がるのか?」というものです。
リスティング広告を購入している企業としていない企業の自然検索の順位を比較するとほとんどの場合、リスティング広告を購入している企業のほうが自然検索の順位も高い傾向があります。
また、これまでリスティング広告を長期間購入していた企業が全面的にリスティング広告を購入しなくなるとその直後ではなくても数カ月後、半年後くらいには徐々に自然検索の順位が落ちてゆく傾向にあるということも多く観測されています。
リスティング広告を購入して訪問者を獲得しているサイトの自然検索の順位が高い傾向にある理由は、広告を購入しているから特別に自然検索の順位が上がるように優遇されるという直接的なものではありません。
広告を購入することによりトラフィックが増えるためにトラフィックも検索順位決定要因の1つとして評価するGoogleの自然検索の順位が高まるという間接的なものです。
(2)ディスプレイ広告
ディスプレイ広告とは、Web広告としてはもっとも初期から存在する広告フォーマットの一つで、Web広告の形式の一種です。Webページの一部として埋め込まれて表示される、画像やFlash、動画などによる広告で、画面上部などに表示される横長の画像広告を特にバナー広告といいます。(e-Wordsより)
ディスプレイ広告も、リスティング広告と同様、サイトのトラフィックを増やす手段ですが、リスティング広告のように検索結果ページに表示されるのではなく、検索結果ページからリンクされているランディングページに表示される広告なのでユーザーは広告よりもそのページにあるメインコンテンツのほうを注目することからリスティング広告ほどの効果は通常ありません。
(3)アフィリエイト広告
リスティング広告やディスプレイ広告は広告の表示またはクリックに対して課金するシステムですが、広告の成果に対して課金するものとしてアフィリエイト広告があります。
アフィリエイト広告では、資料請求や問い合わせ1件に対していくら、あるいは成約したらその何パーセントを支払うという費用体系があります。
メリットとしては広告による成果が上がらない場合はほとんど費用を払う必要がありません。しかし、ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)という中間業者が通常アフィリエイト広告スペースを提供するアフィリエイターのリクルート(採用活動)と支払いの代行、そして広告表示・管理システムを提供するため成果報酬広告という形を取るものの一定の月額利用料金ををASPに支払う必要があります。
(4)新聞・雑誌広告
ネット以外にも旧来の媒体である新聞や雑誌の広告に自社サイトのURLや「XXXXXで検索!」というように予め自社サイトが上位表示するキーワードでの検索を促すメッセージを掲載することにより自社サイトのトラフィック獲得が可能です。
特に読者の属性を絞り込んだ専門誌等は見込み客獲得にも貢献することがあります。
(5)TV・ラジオCM
全国ネット、対象市場に絞り込んだ放送局が放映、放送するCMで自社サイトの検索を促すキーワードをCMの最後に告知することにより検索エンジンからのトラフィック獲得が可能です。
(6)屋外広告
建物の屋上や交通機関、電柱等に自社サイトの検索を促すキーワードやブランド名、URLを広告コンテンツと一緒に掲載することによりトラフィック獲得を目指すことが出来ます。
オフラインのトラフィック獲得方法
その他次のようなネットを使わないオフラインで自社サイトを宣伝する媒体があります。
(1)チラシ・パンフレット
(2)カタログ
(3)看板
(4)張り紙
(5)POP
(6)名刺
(7)その他配布物
(8)展示会
(9)セミナー
(10)イベント
紙のメディアに自社サイトの検索を促すキーワードやブランド名、URLを広告コンテンツと一緒に掲載することや、積極的に展示会やセミナーを主催することにより自社サイトの存在を知らしめてトラフィック獲得が出来る事例も増えています。
他社との連携によるトラフィック獲得方法
広告やネットのようなマーケティング活動の枠を超えたトラフィック獲得方法もあります。
(1)業務提携・企業連合
業務提携は企業と企業がお互いの業績を高めるために契約を結ぶもので、業務提携先としてそれぞれのサイトで紹介をし合ってリンクを張り合うことも増えてきています。
業務提携が企業の部分的な業務の協調なのに対して、企業連合は資本提携などを含めてより包括的に企業と企業が共通の目的のために提携するものです。
こうした提携をすることにより1社1社が別々に集客活動をするよりも相乗効果が生じてより効率的、効果的な集客と運営が可能になることがあります。
(2)共同サイト
共同サイトは、業務提携、企業連合ほど深い関係ではなく、共通の見込み客を集客するために共同でサイトを立ち上げる取り組みです。
そして共同サイトから獲得した顧客に対して予め取り決めたルールにより作業を振り分け利益をシェアするものです。
近年共同サイトとして増えている例としては、相続相談の依頼を獲得するために法律事務所と税理士事務所が共同で運営する相続相談サイトなどがあります。
(3)企業M&A
他の企業を買収することにより、買収された企業が保有するサイトのトラフィックを一気に自社のものにするという大胆なトラフィック獲得方法もあります。特に企業の吸収合併が盛んな欧米では企業M&Aによるトラフィック獲得が成功して業界地図を一変させるような事も起きており、今後日本においても増えることが予想されます。
(4)サイトM&A
企業を買収するのは多額の資本や入念な準備とノウハウが必要ですが、他社が運営しているサイト、特にいわゆるオウンドメディア(ニュースやコラムを発信するサイト)のような多くのトラフィックがあるサイトを買収する事例が国内でも増えてきています。サイト売買の斡旋会社が複雑なサイト価値の計算や契約上の手続きなどのサポートサービスを提供するようになってきています。
また、大規模なオウンドメディア以外にも、個人が副業やアフィリエイト広告収入目的で運営している比較的小規模なサイトやブログのM&AもSEOの普及に伴い散見されます。
新しいトラフィック獲得方法
近年のモバイルユーザーの増加やインターネットを使うデバイスの多様化にともない次のような施策を実施することにより自社サイトのトラフィックを獲得することも出来る時代になりつつあります。
(1)PCサイトの全ページスマートフォン対応
(2)独自アプリの開発
(3)他社アプリへの情報掲載
(4)他社アプリへの広告出稿
(5)スマートTVのアプリ開発
(6)ソーシャルメディア対策
この中でも特にスマートフォンという極めて小さな画面上で自社サイトを見やすく表現するスマートフォン対応を怠れば、本来獲得出来るはずのスマートフォンユーザーがせっかく自社サイトを訪問しても文字が小さく、操作性が悪いPCサイトしか見れないことになり、サイトの離脱率を自ら上げてしまうことになります。こうしたことを防止するためにはスマートフォン対応をあらゆる面で推進する必要があります。
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