3、検索結果上位表示集団の特徴
検索結果1ページ目にある「見えない垣根」
Googleはこれまで見てきたようにトラフィックが多い人気サイトを上位表示させるように検索順位算定方式を変更するようになりました。
しかし、同じようなサイトが検索結果1ページ目を独占しないようにGoogleはQDD(Query Deserves Diversity)というアルゴリズムを持っているのではないかと米国のSEOの専門家達の間で言われています。
このQDDにより同種のサイトばかりが検索結果1ページ目を独占することを防ぎ、多様なサイトが2〜3サイトくらいずつ表示されるようになっていると思われます。
例えば「プリウス」というキーワードで検索すると検索結果1ページ目には:
1位:【メーカーサイト】
トヨタプリウス|トヨタ自動車WEBサイト
2位:【メーカーサイト】
トヨタプリウス|価格・グレード|トヨタ自動車WEBサイト
3位:【画像が複数表示】
プリウスの画像検索結果
4位:【ニュースが複数表示】
ニューストピック
5位:【ポータルサイト】
プリウス(トヨタ)の中古車|中古車なら【カーセンサーnet】
6位:【情報提供サイト】
トヨタ・プリウス - Wikipedia
7位:【比較サイト】
価格.com - トヨタプリウスの自動車カタログ・価格比較
8位:【ポータルサイト】
オートックワン[試乗記]新型プリウスは、VWゴルフやメルセデス・ベンツC...
9位:【ポータルサイト】
オートックワン新型プリウスで最も買い得なグレードは?3月決算フェアで安く
10位:【ポータルサイト】
プリウス(トヨタ)の中古車情報・見積り(1〜30件)|Goo-net中古...
というようにポータルサイトが4件表示されているものの、情報提供サイトや比較サイト、メーカーサイト等偏り無く多種多様なサイトが表示されています。
こうすることによりプリウスのメーカーのサイトが見たいと思うユーザーだけではなく、他の車種と比較したいユーザーや最新のニュースを知りたいというような多様な検索ニーズに応えるようになっています。
検索結果1ページ目にはこのように見に見えない垣根のようなものがあり、各ジャンル3,4件までしか同じ種類のサイトは表示されづらくなっています。
この事は検索結果1ページ目に自社サイトを表示することを困難にしています。何故なら自社がポータルサイトを運営していた場合、競合のポータルサイトが検索結果1ページ目に3社、4社表示されていたら5社目のサイトは表示されることはほとんど無いからです。
この「見えない垣根」の存在があるために、自分の業界においてサイトの人気度がトップ3以内に入るように日頃からユーザーが求めるコンテンツを予測してそれをタイムリーに提供する努力が求められます。
検索結果1ページ目に表示されるサイトの種類は通常次のようなものがあります。
1、無料情報提供サイト
2、ポータルサイト
3、比較・ランキングサイト
4、ショッピングモール
5、政府系サイト
6、協会・団体系サイト
7、メーカーサイト
8、マスメディアサイト
9、ニュースサイト
10、質問サイト
11、大学・研究機関
12、チェーン店
13、コングロマリット
無料情報提供サイト
無料情報提供サイトというのは無料で情報を提供するサイトのことで次のようなものがあります:
(1)レファレンスサイト
Wikipediaのような百科事典サイトや専門用語辞典サイト、英語辞書サイトなどがあります。これらのサイトは何らかの新しい言葉や専門用語を知りたいネットユーザーが紙の百科事典や辞書を使うのではなく気軽にGoogleやヤフー等で検索するようになったため膨大なトラフィックを獲得するようになっています。特にWikipediaはほとんどのキーワードで検索すると検索結果1ページか2ページ目には表示される人気サイトです。
(2)まとめサイト
NAVERまとめサイトのようなまとめサイトはまとめ人と呼ばれる管理人が広告収入を得るために無償でネットユーザーのために特定の情報を載せているリンク集のようなサイトです。非常に多くのまとめ人が自分が決めたテーマの情報を日々ネット上で収集する努力をしており見つけるとすぐにまとめサイトにその情報を投稿します。このおかげでたくさんの検索ユーザーがGoogle等の検索エンジンで自分が情報を収集しなくてもまとめサイトを見るだけで短時間に自分が知りたい情報を知ることが出来るようになりました。
まとめサイトにはこうしたネットユーザーと広告収入を増やすために自分が管理するまとめサイトを更新しようとするまとめ人達の膨大なトラフィックが集まるようになり様々な検索キーワードで上位表示するようになりました。
(3)ブログ
ブログは個人でも気軽に情報発信することが出来るツールです。その利便性故に一般の個人はもとより有名人や各業界で権威のある人物が日々情報発信をしています。中には書籍や雑誌等の情報を超える質が高い情報を発信しているものもあり、たくさんのトラフィックを獲得しているものがあります。
ポータルサイト
ポータルサイトというのは特定の分野に関する様々な情報があり検索出来るサイトのことを言います。元々ポータルとは、港 (port) から派生した言葉で、門や入口を表し、特に豪華な堂々とした門に使われた言葉です。このことから、ウェブにアクセスするために、様々なコンテンツを有する、巨大なサイトをポータルサイトというようになりました。(Wikipediaより)
ポータルサイトには膨大なアクセスが集まりトラフィックが多いサイトがありますが、何故そうなるのかというと次のような理由があるからです:
(1)サイト運営者の他、そのサイトに情報を提供するコンテンツプロバイダーのアクセスが集まる
(2)口コミ情報を投稿するアクティブユーザーのアクセスが集まる
(3)掲載された情報を見るだけのエンドユーザーのアクセスが集まる
(4)たくさんの企業の情報が掲載されているので企業名で検索した時に上位表示されるため企業名で検索したユーザーのアクセスが集まりやすい
こうした様々な目的を持つユーザーのトラフィックを集める仕組みを持つポータルサイトの中には膨大なトラフィックを獲得するものが増えており年々検索結果ページの上位に複数表示されるようになってきています。
ポータルサイトは厳密に分類すると次の3つのタイプがあります:
(1)業種別ポータルサイト
ブライダル情報のゼクシィ、グルメ情報の食べログやぐるなび、法律情報の弁護士ドットコム、自動車情報のカーセンサー等特定の業種の様々な情報が集まりユーザーが探す情報がキーワード検索やカテゴリ検索によりスピーディーに見つかるサイトです。
Web全体から探している情報が検索できるGoogleは「水平検索」と呼ばれますが、こうしたポータルサイトは特定の業種の情報を深掘りしてそこから検索出来るという意味で「垂直検索」と呼ばれます。
(2)地域ポータルサイト
特定の地域の情報が垂直に検索できるポータルサイトのことを地域ポータルサイトと呼びます。その多くがその地域に拠点を置く企業や団体、地方自治体等が運営しており東京に本社を置く大企業では収集することが出来ない地域密着の情報を提供しています。それによりその地域の情報を探している他の地域に在住する人達や地元のユーザー達のトラフィックを集めるようになってきています。
(3)求人ポータルサイト
近年、Googleの検索結果1ページ目を占めるようになってきているものが求人ポータルサイトです。
例えば、「事務職 求人」で検索した時や「事務職 求人 神奈川」で検索した時はともに検索結果1ページ目の10サイト中、10サイト全てがリクナビ、マイナビ、indeed等の求人ポータルサイトになってきています。
これは本来のQDD(Query Deserves Diversity)という多様性のある検索結果を提供しようとするGoogleの趣旨に反する状態ですが、何故こうした偏りがあるのか考えられる理由は、トラフィックの多さです。
個々の企業の求人情報の量は非常に限られており、かつ定員に達するとその情報はサイトから消されることがあります。そうしたサイトは常時膨大な数の求人情報が掲載されている求人ポータルサイトと比べると圧倒的に情報量が不足しておりそれがそのまま上位表示に不利に働くのです。
ユーザーの絶対的幸福を追求するGoogleとしては検索結果に表示される偏りを無くすよりもユーザーにとって利便性の高いサイトを見せたいという方針の方を優先しているのが理由だと考えられます。
比較・ランキングサイト
近年検索結果上位に表示される傾向が高くなったサイトに比較・ランキングサイトというトラフィックが多いサイトがあります。
(1)比較サイト
比較サイトには価格コムのようなありとあらゆるジャンルの商品の価格を比較するサイトから、ノートパソコンのような特定の商品の比較を実際に商品を使用したユーザーが詳しく比較して論評するものまであります。メーカーが売り手視点で売り込む情報ではなく、消費者視点でユーザーが発信する情報が支持されて多くのトラフィックを獲得しています。
(2)ランキングサイト
ランキングサイトは部門別に商品をランク付けするものでどの商品、サービスを購入しようか迷っている消費者の購買決定の手がかりになるものです。
信頼できるサイトは一般ユーザーの口コミや投票によりランキングが決定されています。一方サイト運営者が恣意的に広告料金の支払いが多い商品・サービスを上位にランクインさせる信頼性にかけるものまで様々な種類があります。
ショッピングモール
ショッピングモール市場には多くの企業が進出しましたが、生き残ったものは少なく外国資本と国内資本それぞれわずかな企業が市場のほとんどを専有するようになりました。
(1)外国資本
アマゾンが世界最大のショッピングモールであり全世界での売上12兆円、取り扱い品目数20億品目にまで成長しています。国内でも月間訪問者数3740万人、売上1兆円にまで成長しています。(2015年12月 comSCORE調べ)
その膨大なトラフィックを獲得するために次のような仕組みを持っています:
①サイトにログインすることにより過去の購入履歴が閲覧できる
②サイトにログインすることにより商品のキャンセル、配送状況の確認が出来る
③プライム会員という有料会員になることにより映画やドラマなどの映像コンテンツが見放題になり、音楽も聴き放題になる。その他無料のクラウドサービス等があり長時間サイトにログインするユーザーが増えている
④アマゾンマーケットプレイスには個人でも法人でも出店することが出来るので出店者は頻繁にサイトにログインして商品の出品作業や在庫管理作業をする
⑤AWS(アマゾンウェブサービス)というクラウドサービスがありサイト運営者や技術者達が頻繁にアマゾンのサイトを使う
⑥商品を紹介して報酬を得ようとするアフィリエイター達が宣材を取得したり、報酬の支払状況などを確認するためにサイトにログインをする
(2)国内資本
国内資本のショッピングモールで生き残ったのは楽天とヤフーショッピングの2つです。
楽天は3,338万人の月間訪問者数(2015年12月 comSCORE調べ)を誇り、7135億円(2015年度)の売上があります。
ショッピングモールの楽天市場を軸に宿泊予約、金融サービス等オンラインのコングロマリット企業(複合企業)に成長してきています。
それを可能にしたのが楽天のポイントシステムです。楽天の各種サービスを使えば使うほどポイントが貯まり、かつそのポイントを参加サイト、参加企業で使うことが出来る利便性が支持されています。
ヤフーショッピングは、2012年に出店料金の無料化を実施して以来大きく成長するようになりました。店舗数は約37万、商品数は約2億品目に増加しました。アスクルを傘下に収めLOHACO等の共同事業などを含めたEコマース全体の流通総額は、2015年度第3四半期に1兆円を超えました。(日経ビジネス2016年4月4日号)
ヤフーショッピングのトラフィックの増加の原動力はポータルサイトであるヤフーからのリンクです。ポータルサイトには国内トップクラスのニュースサイト、オークション、検索サイト等が多数ありそれらのサイトからの流入がトラフィックを増やすようになっています。
政府系サイト
法律に関するキーワードや助成金、補助金に関するキーワードで検索すると政府系のサイトが検索結果1ページ目の半数近くを占めることがあります。
政府系のサイトには:
(1)中央政府省庁
(2)地方自治体
の2つがあります。
政府のサイトは大手企業や人気サイトからリンクされるだけではなく、中小企業や個人のサイトからもリンクされる傾向があるのでトラフィックが増えるだけではなく、被リンク効果により検索順位が上がる傾向が高くなっています。
協会・団体サイト
様々なキーワードで上位表示しやすいのが協会、団体系のサイトです。
これらは大きく分けると次の3つがあります。
(1)業界団体
(2)地域団体
(3)学会・研究会
これらのサイトにトラフィックが増える理由は:
①参加者が入会するためにサイトを訪問する
②会員に提供されるサービスを受けるために会員が訪問する
③会員が誰かを調べようとするユーザーが訪問する
④会員の名前で検索すると会員紹介ページが上位表示するので訪問者数が増えやすい
⑤会員や会員にサービスを提供したい企業がコンテンツを提供するためにサイトにログインする
⑥会員同士が交流するためにサイトにログインをして情報交換をする
などがあります。
メーカーサイト
製品を企画、製造するメーカーのサイトは様々なサイトからリンクされるだけではなく、販売店が「メーカーサイトを見る」という形で参照先としてのリンクを張る傾向があり多くのトラフィックを集める傾向にあります。
マスメディアサイト
マスメディアサイトは:
(1)新聞社
(2)雑誌社
(3)放送局
などの旧来のメディアが運営しているもので一般人が好む:
①スポーツ選手やチームの情報
②芸能人のニュースや画像
③人気テレビ番組や映画のテキスト情報、画像、動画
④その他通常高額な著作権使用料がかかるコンテンツ
などがあります。
これらのコンテンツは需要が高いために、多くのサイトやブログ、ソーシャルメディアなどからリンクが張られる傾向が高く膨大なトラフィックを獲得するサイトが多数あります。
ニュースサイト
ヤフーニュース等の大手ニュースキュレーションや新興企業が運営するニッチ情報のニュースサイト等は絶え間ない情報更新とソーシャルメディアを活用することにより膨大なトラフィックを獲得するようになってきています。
質問サイト
ヤフー知恵袋や教えて!goo等、誰でも質問を投稿することが出来、善意の第三者が無償で回答する質問サイトは人気が高く、多くのトラフィックを獲得するようになっています。
質問サイトにはありとあらゆるジャンルの質問文とその回答文が掲載されているページが日々増えており、適切な回答をし続けるユーザーには特別なステータスが与えれモチベーションを高められたユーザーがさらに多くの質問に無償で回答するという仕組みが構築されています。
大学・研究機関
大学や大学院、研究所等のサイトはお互いに情報、データの参照先としてリンクを張り合う傾向が高く膨大なトラフィックをお互いに送り込んでいます。
それだけではなく、企業や個人のサイトから情報の信頼性を高めるためのエビデンス(証拠、根拠)としてリンクが張られており多くのトラフィックを獲得しています。
チェーン店
近年の目立った傾向としては、一箇所でビジネスを営んでいるローカルな企業よりも、チェーン店として複数の地域でビジネスを営んでいるチェーン店のサイトのトラフィックが増えてきています。
チェーン店のトラフィックが増える要因としては:
(1)スタッフの求人活動が活発でいくつもの有力な求人ポータルに求人広告を出しておりそこから自社サイトにリンクが張られている
(2)個店の情報をブログやソーシャルメディアで活発に発信している
(3)個店の情報が業種別ポータルサイトに掲載されていてそこから自社サイトにリンクが張られている
(4)各地の経済団体や組合等に加入していてそれらのサイトからリンクを張ってもらっている
(5)知名度が高いので様々な個人や企業のサイトからリンクを張ってもらいやすい
(6)売上規模が大きく上場しているチェーン店は株式関連のサイトやニュースサイトからリンクを張ってもらうことが多い
(7)各地の取引先と取引があるので取引先からリンクを張ってもらいやすい
(8)各地の店舗、あるいはチェーン全体で大規模な広告を出す資金的な余力があるため広告の出稿先からリンクを張ってもらうことが多い
(9)各地の店舗、あるいはチェーン全体のニュースをメディアに取り上げられてもらいやすい
等があります。
コングロマリット
コングロマリットとは複合企業のことで多種多様な事業を営んでいる大規模な企業です。
それぞれの事業体のサイト同士がリンクを張りあうことにより膨大なトラフィックの交換がされています。
また、広告予算、PR予算、求人予算があるため各種メディアに取り上げられることが多くさらにトラフィックを増やす善循環が生み出される傾向があります。
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