前回の記事ではポータルサイトとは何か?について解説しました。今回は総合ポータルサイトについてです。ポータルサイトという言葉は、かつては「ウェブに入るための総合的な窓口」として知られていました。ここでの「ポータルサイト」とは、ホットペッパーやSuumo、食べログのように特定の分野に特化したものではなく、インターネットへの幅広い入口を提供するものでした。
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1990年代に繁栄した総合ポータルサイト
古くからインターネットを使用している方なら、InfoseekやBIGLOBEといった名前をご存知かもしれません。これらは、初期のインターネットユーザーにとって重要な入口であり、BIGLOBE等はインターネット接続のためのプロバイダーとしても機能していました。これらのプロバイダーは、インターネットの良さや使い方を初心者に教えるために、総合ポータルサイトを運営していたのです。
1990年代には、様々なポータルサイトが存在しました。Yahoo!はその中でも特に強い存在感を持っていましたが、他にもExcite、Infoseek、MicrosoftのMSNなど、多くの異なるサービスがありました。MSNは特にユニークなサイトで、その変化には注目が集まっていました。
MSNはスタート当時はポータルサイトではなく、独立したミニインターネットだった
MSN、またはMicrosoft Networkについては、これはMicrosoftによって開発された独自のインターネットサービスでした。当時、このサービスは一般のインターネットとは完全に分離されており、Microsoftが100%コントロールしていました。これは、まさにMicrosoftが提供するミニインターネットのようなものだったのです。
《ミニインターネットのようなものだった1994々当時のMSN》
《参考サイト》 What The Hell Was The Microsoft Network?
私自身も、20代の頃にアメリカで留学していた時に、このMSNに契約した経験があります。ある日、家電量販店で大きなパソコンを購入しようとした際、ほとんどのパソコンには「マイクロソフトネットワークはいかがですか?」というクーポン券が付いていました。私はこの見た目に魅力を感じ、実際のサービス内容をほとんど確認せずに契約しました。
しかし、実際にMSNを使用してみると、その操作性や機能はほとんど意味不明で、何をどう使えばいいのかさっぱりわかりませんでした。加えて、ページを開くのにも非常に時間がかかり、使い勝手が悪かったため、すぐに使用をやめてしまいました。今振り返ると、この体験は私にとってインターネット的なサービスに接する最初の体験であり、原体験とも言えるものでした。MSNは、その後のインターネットの発展に大きな影響を与えたサービスの一つであり、このような初期の試みが今日のインターネット環境を形作る上で重要な役割を果たしていることは間違いありません。
マイクロソフト社は、The Microsoft Networkという独自のミニインターネットを作り上げました。しかし、このThe Microsoft Networkは閉鎖的な性質を持っていたため、最終的には多くのユーザーに受け入れられなかったのです。これに対し、マイクロソフトは興味深い転換を遂げます。彼らはThe Microsoft Networkのコンセプトを捨てるのではなく、根本的に内容を変えることにしました。その結果、The Microsoft Networkはその頭文字のMSNをサービス名にしてウェブ上に存在するポータルサイトへと進化を遂げたのです。
《2005年当時のMSN》
この新しいMSNは、カテゴリー検索が可能で、ショッピング、ニュース、株価情報などのコンテンツが充実していました。当時のMSNのトップページは、例えばInfoseekのようなサイトと似たような構成を持っていました。しかし、マイクロソフトはさらなる進化を目指し、2006年の半ばから2009年初頭にかけてLive Search(ライブサーチ)という名称に変更し、その後「Bing」という検索エンジンをリリースしました。これはマイクロソフトがGoogleに対抗し検索ビジネスに本格的に進出する試みでした。
しかし、Bingの道のりは決して平坦ではありませんでした。世界的に見ても、Bingのシェアは数パーセントに過ぎず、Googleの圧倒的な90%近いシェアに比べると、その規模はかなり小さかったのです。結局、マイクロソフトのこの試みは大きな影響力を持つには至らなかったと言えます。このマイクロソフトの試行錯誤は、技術の進化とともに新しい道を切り開こうとする企業の姿勢を示しています。MSNからBingへの移行は、市場の変化に応じて自らを進化させるマイクロソフトの柔軟性と革新性を物語っています。
《2014年当時のbing》
マイクロソフトは、常に新しい技術の先端を行く企業として知られています。彼らの最新のチャレンジは、皆さんも既にご存知の通り、オープンAIが提供する「ChatGPT」への大規模な出資でした。この動きにより、マイクロソフトはおそらく筆頭株主となり、Googleと競合する新たなフロンティアに踏み出しました。この出資は、ChatGPTと呼ばれる生成型AIの分野に対するもので、2023年11月頃に成立しました。これにより、かつてのMSNサーチは現在のBingに進化し、今度はオープンAIという強力なパートナーと共に、さらなる発展を目指しています。
《2024年現在のChatGPTと提携後のBing》
CompuServeとニフティ
ニフティについて話を進めてみましょう。この会社は非常にダイナミックな歴史を持っています。元々は富士通がアメリカのCompuServeという企業と提携して、パソコン通信ネットワークを運営していたんですね。このネットワークは、真っ黒な画面に白や緑のテキストが点滅して表示されるといった、今とはかなり異なるスタイルのものでした。速度も非常に遅いものでしたが、それでも当時は革新的な試みだったのです。
ニフティのネットワークは、アメリカで普及していたCompuServeの技術に基づいており、日本版として展開されました。特に大学生や大学院生、インテリ層など、特定のコミュニティにおいては非常に人気がありました。これらのユーザーたちは、様々な情報交換を行っており、そのコミュニケーションの場としてニフティは重要な役割を果たしていたのです。
また、活躍する建築士や電気技師、そしてパソコンに精通する人々も、こぞって富士通のパソコンを購入し、ニフティを利用していました。このように、ニフティは特定の専門分野や知識層に根強い人気を誇っており、当時の日本のインターネット文化において重要な役割を果たしていたことは間違いありません。ニフティの存在は、日本のインターネットがどのように成長してきたかを理解する上で、非常に興味深い一例と言えるでしょう。
BIGLOBEとPC-VAN
次に人気のあった総合ポータルサイトはBIGLOBEでした。これは、かなり懐かしい名前ですが、今も存在しているサービスです。BIGLOBEは、NECが運営するもので、富士通と同様に、かつては独自のパソコンネットワーク、いわゆるPC-VAN(ピーシーバン)を提供していました。しかし、そのネットワークが終了した後、BIGLOBEもMSNと同様にインターネットへとシフトし、発展を遂げました。BIGLOBEは、インターネットサービスプロバイダー(ISP)として機能しており、インターネット接続サービスを提供しています。特に、会員向けには総合ポータルサイトを設けています。
このようにBIGLOBEも、インターネットの進化と共に自身も変化し、成長を続けてきたサービスの一つです。初期のパソコンネットワークからインターネットサービスプロバイダーへの転換は、時代の変化に応じた企業の柔軟な対応を示しています。BIGLOBEの存在は、日本のインターネットサービスの歴史を振り返る上で、非常に重要な一部と言えるでしょう。
Infoseek
かつてInfoseekという総合ポータルサイトもありました。現在は楽天グループに属しています。このInfoseekには、全日本SEO協会の検定試験や審査委員を務める中村義和さんなど、インターネット黎明期に活躍した多くの人々が関わっていました。Infoseekは、日本に輸入されたサービスでありインターネット黎明期の代表的な総合ポータルサイトとして多くのユーザーに利用されていました。
Infoseekのような総合ポータルサイトには、ビジネスやファイナンスなど多岐にわたるカテゴリーが存在していました。例えば「ビジネス・ファイナンス」カテゴリーをクリックすると、証券会社などのウェブサイトへのリンク集が表示されます。これはディレクトリー型検索エンジンの一例です。また、ニュース、株価情報、健康アドバイスなどのカテゴリーもあり、これらの要素が揃って初めてポータルサイトと呼ばれるわけです。
《1997年当時のInfoseek》
総合ポータルサイトは、単に検索機能を提供するだけではありません。また、リンク集的なディレクトリを有しているだけでもないのです。実は、新聞社などのマスメディアが発信するニュース記事も配信しています。つまり、朝日新聞や読売新聞といった大手新聞社の記事を転載し、ユーザーはこれらの総合ポータルサイトに訪れるだけで、さまざまな最新ニュースを一度に閲覧できるのです。これはユーザーに大きな利便性をもたらしています。
また、後に追加されたサービスとしては、無料のメールサービスが挙げられます。今ではGmailやYahoo!メールといったものが一般的ですが、これらもポータルサイトの重要な機能の一つとなっています。これらのサービスは、ただ単に情報提供をするだけでなく、ユーザーが日常的に利用したくなるような、習慣化しやすい特性を持っています。例えば、キーワード検索は、一生で一度や二度するものではなく、何か気になったときや知りたい情報があるとき、また何かに悩んでいるときに頻繁に利用される機能です。
スティッキネスのあるサービス
ポータルサイトが日常的に頻繁に利用される理由の一つは、その「スティッキネス」、つまり粘着性にあります。スティッキネスとは、ユーザーが繰り返し戻ってきたくなるような魅力を持つサービスのことを指します。毎日何度も検索する行動は、このスティッキーネスの良い例です。ユーザーは、日々の情報収集や疑問解決のためにポータルサイトを訪れます。
例えば、キーワード検索機能は、ユーザーが何かを知りたいと思った時、いつでも簡単に情報にアクセスできるため、非常に便利です。また、ウェブサイトの役立つリンク集やディレクトリもスティッキーネスが高いサービスの一つです。これらは編集者によって管理されており、客観的で信頼性の高い情報が提供されます。余計な内容がなく、サイトが提供する内容を客観的に説明するため、ユーザーにとって非常に有用なリソースとなっています。
さらに、毎日のニュースのチェックもポータルサイトのスティッキーネスを高める要因です。仕事や学校へ行く途中、電車内での移動時、または暇な時間に、多くの人々は最新のニュースをチェックします。このように、ポータルサイトは日常生活の一部として定着しており、ユーザーが定期的に訪れる習慣を作り出しています。それは、情報へのアクセスが容易であり、常に新鮮で関連性の高い内容が提供されるため、中毒性のある魅力を持っているのです。
ポータルサイトがユーザーの生活に密着し、定期的に訪れる場所になる理由は、こうしたスティッキーネスの高いサービスの提供によるものです。これは、インターネットビジネスの成功の鍵とも言える要素であり、ポータルサイトが長く愛され続ける理由の一つなのです。
ソーシャルメディアにはスティッキネスを超えた「中毒性」がある
デジタルコミュニケーションの進化は、私たちの生活様式を根底から変えています。その最前線に立つのは、メールとソーシャルメディアです。今や、メールは生活の一部となり、その確認は日常のルーチンとなっています。一日に一回の確認では不十分で、予測不能なタイミングで届くメールに対応するため、私たちは頻繁にメールボックスをチェックするようになりました。
さらに、ソーシャルメディアの台頭は、特にInstagramやYouTubeのようなプラットフォームにおいて、その中毒性が顕著になっています。暇を感じるとすぐにInstagramを開き、気がつけば何十分もその世界に没頭していることがあります。YouTubeも同様で、学習ツールとしての利用から、短い動画の消費へと傾向が変わりつつあります。
しかし、この中毒性はただの時間の浪費というわけではありません。ポータルサイトの成功が示すように、ユーザーを惹きつけ、維持することは、ビジネスにおいて極めて重要な要素です。ユーザーが離れられない「スティッキネス」と中毒性のあるコンテンツを生み出すことは、人気サイトの必須条件となっています。
このように、メールやソーシャルメディアは私たちの時間を奪うだけではなく、ビジネスにおける顧客維持の鍵を握っています。デジタル時代におけるコミュニケーションツールとエンターテインメントの形態が、どのように私たちの生活に影響を及ぼし、またどのようにビジネスに活かされるか、そのバランスを見極めることが今後の大きな課題と言えるでしょう。
総合ポータルサイトの興亡とウェブサイト運営の教訓
これまで述べてきたように、総合ポータルサイトはインターネットの玄関口として絶大な人気を誇っていました。しかし、突如その輝きは失われ、今ではほとんど見る影もありません。その理由は一体何だったのでしょうか。
この変化の背後には、ウェブサイトの数の急増があります。インターネットの初期段階では、限られた数のサイトが特定のカテゴリに属していました。しかし、時間が経つにつれ、ウェブサイトの数は爆発的に増加し、これによりカテゴリー分けが困難になりました。
例えば、スキー用品を販売すると同時にニュースも提供するサイトのように、一つのサイトが複数のカテゴリにまたがるケースが珍しくなくなりました。これらのサイトをどのカテゴリに分類すべきか、という問題は多くのポータルサイト運営者を悩ませました。更に、一つのサイトが無数のカテゴリーに該当するようになり、カテゴリー分けが実質的に不可能になりました。これは、運営者にとっては管理上の悪夢であり、ユーザーにとっても自分が探している情報を見つけにくい状況を生み出しました。
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この結果、総合ポータルサイトは徐々に影響力を失い、最終的にはほとんどのサイトが運営を辞めてしまいました。これは、ウェブサイト運営において柔軟性と進化の重要性を示しています。インターネットの世界は常に変化しており、その変化に適応することが成功の鍵となるのです。
総合ポータルサイトの生き残りとその未来
インターネットの進化に伴い、多くの総合ポータルサイトが姿を消した中で、例外的な存在があります。それがYahoo! JAPANです。2010年頃までは、Yahoo! JAPANはカテゴリー分けを維持しており、日本で唯一の包括的なディレクトリカテゴリー検索エンジンとしての役割を果たしていました。しかし、その後ヤフーカテゴリーは廃止されました。
この変化は、Yahoo! JAPANがディレクトリカテゴリー検索エンジン以外の形でサービスを提供し続けるという新たな道を模索していることを示しています。Googleなどの競合他社に対して勢いは衰えているかもしれませんが、Yahoo! JAPANは日本における総合ポータルサイトとしての地位を保っています。
Yahoo! JAPANの運営規模は驚異的で、東京の赤坂に位置する巨大なプリンスホテルのビルをほぼ借り切って何千人もの社員が働いているとされ、このような大規模な運営体制がなければ、総合ポータルサイトを維持するのは難しいでしょう。このケースは、インターネットの世界における変化の速さと、それに適応し続けることの重要性を示しています。Yahoo! JAPANのような大手が変化に対応し、新しいサービスを提供することで生き残っている現状は、他のウェブサイト運営者にとっても重要な教訓となるはずです。このデジタル時代において、適応し続けることが成功への鍵なのです。
ウェブサイト運営のジレンマ「専門性と市場のバランス」
ウェブサイト運営の世界では、多様性と専門性のバランスが成功の鍵を握っています。一つのジャンルに特化したコンテンツを提供することは、初めは魅力的に思えるかもしれません。しかし、時間が経つにつれ、さまざまな情報が集まり、ウェブサイトの専門性が低下するリスクがあります。例えば、車に特化したサイトが自転車やバイク、ボートの情報を取り扱い始めると、その分野に関する深い知識を持ったスタッフが必要になります。
ここで重要なのは、情報の幅を広げることではなく、情報を絞り込むことです。特定の分野に特化することは、その分野における専門性と品質を維持するために不可欠です。しかし、専門分野を絞りすぎると、市場が狭まり、売り上げが低下する恐れがあります。マニアックな内容に興味を持つ人は多くはなく、その結果、市場が小さくなり、売り上げも減少していきます。
ウェブサイト運営においては、適度にテーマを絞りつつ、自社が維持できる規模を保つことが重要です。高い品質とクオリティを維持することができなければ、サイトは衰退し、企業自体も消滅するリスクがあります。このジレンマを乗り越えるためには、専門性と市場の需要のバランスを見極め、適切な運営戦略を立てることが求められます。ウェブサイト運営は、常に変化し続ける市場の中で、柔軟性と洞察力が不可欠なのです。
大企業の戦略と中小企業の対応策
インターネットの世界における大手企業の戦略は、しばしば注目の的となります。特に、Yahoo! JAPANやGoogleのような企業は、その経営手法と戦略で多くの学びがあります。これらの企業は、多額の資本を集め、優秀な人材を獲得することに成功しています。これらの巨大企業は、東京の渋谷区や港区区にある一等地の洗練されたビルにオフィスを構えています。このような場所で働くことは、多くの人にとって魅力的であり、これが人材の獲得に一役買っています。
Googleもまた、渋谷のスクランブル交差点近くにある高層ビルの大部分を占めるオフィスを持っています。これは、渋谷という一等地で働きたいと考える優秀な人材を惹きつける要因の一つです。また、株主や取引先に対する信頼を築くためにも、このような一等地にオフィスを構えることは重要です。
しかし、すべての企業がこのような大規模な戦略を取るわけではありません。中小企業にとっては、自社の強みを再発見し、定期的にビジネスモデルを見直すことが重要です。自社の特徴を絞り込み、それを強化すること、そして必要に応じて優秀な外部企業との協力やアウトソーシングを行うことが、成功の鍵となるでしょう。Yahoo! JAPANのような大手企業の戦略は、総合ポータルサイトの生き残りとしては特異な存在ですが、中小企業にとっては異なるアプローチが求められます。大手企業の手法を参考にしつつも、自社に合った戦略を見つけることが、この競争の激しいデジタル時代においては不可欠です。
特化型ポータルサイトの成功の秘訣
インターネットの進化とともに、多くのポータルサイトが姿を消していきました。しかし、特定のテーマに特化し、その分野を深く掘り下げた特化型ポータルサイトは生き残り、大きな成功を収めています。
その代表的な例が、リクルートが運営する「ホットペッパービューティー」や「ホットペッパーグルメ」です。これらは美容や飲食業界に特化し、その分野の深い知識と幅広い情報を提供することでユーザーの心を掴んでいます。同じくリクルートの「SUUMO」も、住宅関連の情報を提供するポータルサイトとして、圧倒的な人気を誇ります。また、食べログは飲食店のレビューと情報提供に特化し、地域別情報に強いエキテンやEPARKなども存在感を示しています。求人情報に特化したポータルサイトも注目されており、「Indeed」や「タウンワーク」などがその例です。
これらの特化型ポータルサイトが成功している理由は、特定のテーマに焦点を絞り、その分野の深い情報を提供することにあります。ユーザーは特定のニーズや関心に応じた詳細な情報を求めており、このようなサイトはそのニーズに応えることができるのです。一般的なポータルサイトと異なり、特化型ポータルサイトはその専門性により独自の価値を生み出し、継続的な発展を遂げているのです。
特化型ポータルサイトの強みは「垂直検索」
特化型ポータルサイトがインターネット世界で際立つ存在となっている理由の一つが、垂直検索の可能性にあります。垂直検索とは、特定のカテゴリーやテーマに深く特化し、細かい条件検索を可能にする検索エンジンのことを指します。
実際の例を見てみましょう。たとえば、EPARKは地域に特化したポータルサイトです。ここでは、例えば「練馬区」という地域を指定し、さらに「肩こり」など特定の条件で検索を絞り込むことができます。また地域に特化したポータルサイトには「エキテン」というものもあります。
エキテンでは、まず東京都の中で特定の路線や駅を選択し、その後にリラクゼーションや整体などのサービスを選びます。さらに「ネット予約可能」、「クーポンあり」、「早朝OK」、「駐車場あり」など、細かい条件を追加して検索を絞り込むことができます。これにより、ユーザーは自分のニーズにぴったり合ったサービスを見つけることができるのです。
このような垂直検索は、ある一つの事柄について深く掘り下げ、より細かな検索結果を提供します。ユーザーは、自分の具体的な要望に合わせてサービスを絞り込むことができ、これが特化型ポータルサイトの大きな利点となっています。特化型ポータルサイトは、この垂直検索の能力を活かし、ユーザーにとって価値ある情報を提供することで、その存在感を示しているのです。
垂直検索と水平検索
インターネットの情報検索において、特化型ポータルサイトと一般的な検索エンジンのアプローチは大きく異なります。一般的な検索エンジン、例えばGoogleやYahoo! JAPANは、「水平検索」というアプローチを取っています。これは、幅広い範囲の情報を扱うものの、特定の分野に深く特化した情報を提供することは難しいという特徴があります。条件検索の範囲も限られています。しかし、Googleショッピングのように、価格帯で絞り込むことができる垂直検索に近い試みも行われています。
一方で、特化型ポータルサイトは、特定のテーマやカテゴリーに深く特化し、細かい条件での検索が可能です。例えば、SUUMOやエキテンなどは、ユーザーに高い利便性を提供し、大きな支持を得ています。これらのサイトは、特定のカテゴリーの情報を深く掘り下げ、ユーザーが必要とする詳細な情報を提供できるため、成功しています。
インターネットが日々進化し、情報が増え続ける中で、従来のポータルサイトでは扱いきれないほどのカテゴリーが生まれています。これにより、特化型ポータルサイトの需要が高まり、検索結果の質の向上に寄与しています。ウェブの発展と共に、これら特化型ポータルサイトは、情報の海の中でユーザーにとっての灯台のような存在となっているのです。
ウェブ検索の進化とユーザーの検索パターン
ウェブ検索の世界は日々進化しており、ユーザーの検索パターンも多様化しています。まず、地域ビジネスに関連する検索を例に挙げましょう。例えば、「整体 仙台」という検索を行うと、ホットペッパービューティーや楽天ビューティー、エキテンなどの特化型ポータルサイトが結果として表示されます。これらのサイトは、地域ごとのビジネスやサービスに特化しており、ユーザーにとって役立つ情報を提供します。
次に、物販系のキーワード検索について考えてみましょう。例えば「ノートパソコン」や「家具 通販」といった商品を検索する場合、Amazonやヤフーショッピング、楽天市場などのオンラインショッピングモールが上位に表示されることが多いです。
さらに、検索エンジンの進化を見据えると、生成AI技術の発展が重要な役割を果たします。例えば、Microsoft BingやGoogleが開発する生成AIによる検索エンジンは、ユーザーの素朴な疑問ややり方の説明などを提供するようになってきています。
ウェブ検索の未来とSEOの重要性
ウェブ検索の世界は、生成AIの台頭とともに、新たな局面を迎えています。特に、チャットGPTのような生成AIの進化が、今後のウェブサイト運営に大きな影響を与える可能性があります。しかしこの変化が100%確実であるわけではありません。そのため、ウェブサイト運営者は従来通り、知識を提供する役立つコンテンツの制作に力を入れる必要があります。検索エンジンは引き続きこれらのコンテンツを評価し、ユーザーに提供するでしょう。
一部の意見では、生成AIの普及によってSEO(検索エンジン最適化)が無効になるのではないかという懸念がありますが、私はそうは考えていません。ユーザーは一方のサービスだけを利用するのではなく、多様なサービスを組み合わせて利用することが多いです。したがって、SEOは引き続き重要な役割を果たし、ウェブサイトの訪問者を増やすための重要なツールとして機能します。
次回は、オンラインショッピングモールやネットオークション、最近話題のまとめ比較口コミサイトなど、ウェブ上に生まれたさまざまなサービスについて掘り下げて解説していく予定です。これらのサービスはウェブサイト運営者やユーザーにとって非常に重要であり、今後のウェブの発展においても大きな役割を果たすでしょう。SEOの今後の動向とともに、これらのサービスを理解することはウェブマーケティングを成功させるためには不可欠です。