オンラインショッピングモールとは?
今回は、オンラインショッピングモールについて解説します。オンラインショッピングモールとは、インターネット上で運営される仮想のショッピングモール(商店街)のことです。複数の小売業者やブランドが集まり、さまざまな商品やサービスをオンラインで販売しています。消費者は、自宅や移動中など、どこからでもインターネット接続を通じてこれらの商品にアクセスし、購入することができます。伝統的な実店舗と違って、オンラインショッピングモールは24時間365日いつでも利用可能で、商品の検索、商品比較やレビューの確認が出来るため、便利で効率的なショッピング体験をネットユーザーに提供しています。
三井物産の「キュリオシティ」
日本国内のオンラインショッピングモールの業界は、初期段階ではまだ未開拓の領域であの有名な楽天市場は日本で最初のオンラインショッピングモールではありませんでした。楽天市場が開業する前にもいくつかのオンラインショッピングモールが存在していたのです。
日本のインターネット市場が未だ始まったばかりの1990年代、インターネットはまだ新しいもので、多くの人にとっては未知の領域でした。この時代、インターネットはマニアックな趣味の人々やオタク文化の一部と見なされがちで一般人は使っていませんでした。しかし、そんな中でも、インターネットの将来性に注目し、オンラインショッピングモール事業に進出した企業がありました。
特に注目すべきは、三井物産がスタートさせた「キュリオシティ」というオンラインショッピングモールです。これは、日本における大規模なオンラインショッピングモールとしては事実上最初の例です。キュリオシティとは、好奇心を意味する「Curiosity」との掛け合わせで、ショッピング体験を楽しむというコンセプトが込められていました。
このプラットフォームでは、美容、健康、ダイエット、全国の名産フード、スポーツ用品、DVDなど多岐にわたるカテゴリーが揃っていました。また、通販専門会社のベルメゾンとの提携やマネーサービスも展開していたことから、その多様性と革新性が伺えます。
しかしながら、その時代のウェブデザインは今日の基準から見ると、非常にシンプルで、個人のサイトのような印象を与えるものでした。それでも、その時代においては革新的であり、25年前の技術でこれを実現したこと自体が注目に値します。このキュリオシティの事例から、日本のオンラインショッピングモールがどのようにして発展してきたのか、その歴史的な一面を垣間見ることができます。
オンラインショップマスターズクラブの「逸品ドットコム」
他にも特に興味深いオンラインショッピングモールがありました。それは、「逸品ドットコム」というユニークなオンラインショッピングモールです。このモールは、一般的なショッピングモールとは少し異なり、独立した商店主たちが集まり、インターネットを活用した電子商取引(eコマース)に挑戦する、実験的な場として形成されました。
この「逸品ドットコム」では、私自身も大変お世話になったことがあります。実際、私が全日本SEO協会を立ち上げ、全国の事業者がインターネットを通じて検索順位を上げ、売上を伸ばすためのサポートを行うに至った背景には、この「逸品ドットコム」の存在が大きく影響しています。
「逸品ドットコム」の会長、森本さんは、日本におけるインターネット通販や販売のパイオニア的存在でした。彼が運営していたもう一つの「オンラインショップマスターズクラブについても触れておきたいです。こちらでも、森本さんの運営のもと、多くの助けを受けました。私がSEOのセミナー講師としての知名度がまだない時期に、森本さんは私に声をかけてくれ、多くのECサイト運営企業の皆さんに私のSEOセミナーの存在を知っていただきました。福井県や札幌など、私が普段訪れない地域でセミナーを開催していただき、私を講師として招いていただきました。その結果、多くの現在でもお世話になっているお客様や会員様と出会うことができました。
このように、キュリオシティや、逸品ドットコムをはじめとするオンラインショッピングモールの成立と成長は、日本のeコマースの歴史において重要な一部として語られるべきです。これらは今は存在していませんが、多くの起業家や小規模事業者に新しいビジネスの機会を提供し、デジタル時代の商取引の可能性を広げたのです。
日本の3大オンラインショッピングモール
日本のオンラインショッピング業界の発展において、特筆すべきは、楽天市場とYahoo!ショッピングの登場です。楽天市場は特に早い段階で市場に参入し、1997年に東京目黒区の小さな事務所でスタートしました。その後の大ヒットは、オンラインショッピング業界における大きな転換点となりました。
楽天市場は、創業者の三木谷氏のリーダーシップの下、多くの批判や挑戦にも関わらず、日本独自の「楽天ポイント経済圏」を築き上げました。これは、通販サイトとしてはナンバーワンの地位を占める楽天市場の中核を形成しています。1997年に誕生した楽天市場に続いて、1999年にはYahoo!ショッピングもスタートしました。
当時の楽天市場の画像をインターネットアーカイブのウェイバックマシーンを通して見ると、現在の楽天市場に近い姿が見て取れます。当時から、サントリーコレクション、東急百貨店、阪急百貨店、名鉄百貨店、ANAなどの大手企業が出店していました。楽天市場の営業力の強さが、これら大手企業を引き付け、多くの小さな店舗や会社も夢を抱いて出店しました。そして、楽天は多くの成功物語を生み出しています。
これらの動きは、日本のオンラインショッピング業界の成長と発展において重要な役割を果たしました。楽天市場とYahoo!ショッピングの登場は、多くの小規模な店舗にも大きなチャンスを与え、業界全体の拡大に寄与したのです。
楽天は「旅の窓口」を買収してグループ化に成功
楽天市場は、「旅の窓口」という当時有名だった宿泊予約サイトを買収し、現在の楽天トラベルへと発展させました。楽天市場のビジョンは、あらゆるものを売ろうという野心的な企画に満ちていました。これは、楽天市場の他にも、楽天トラベルやフリマサイトの売上など、楽天グループ全体の強力な経済力を示しています。
《出典》【楽天トラベル】サイト統合のご案内
https://travel.rakuten.co.jp/info/new_rakutra/
一方で、Yahoo!ショッピングも、Yahoo!オークションやその他のYahoo!JAPANグループのサイトとのデザインの共通性を持っていました。これは、Yahoo!JAPANを使い慣れているユーザーにとって親しみやすく、見やすいインターフェースを提供することに成功しています。Yahoo!ショッピングは、その独特の個性と自社の持ち味を生かしたデザインで、ユーザーの心をつかみました。
これらのプラットフォームは、日本のインターネット業界における大きな進歩をもたらし、今日に至るまでその影響力を保っています。楽天市場とYahoo!ショッピングの成功は、インターネットを活用したビジネスモデルの可能性を広げ、他の多くの企業に影響を与えたのです。
Amazonが日本市場に進出
インターネットの世界は、その時点で日々進化しており、特に大手企業がインターネットを利益の源として真剣に取り組み始めたのが2000年頃でした。その時代では、インターネットに先んじて進出することが大きな優位性を意味していました。しかし、米国最大のオンラインショッピングモールであるAmazonが2000年11月に日本に進出したことにより状況は一般しました。Amazonの参入により、既存のプレイヤーが新たな競争に直面し、消費者にはさらに多様な選択肢が提供されることになったのです。特にAmazonが打ち出したAmazonプライム会員への送料の無料化と、商品到着時間の短縮化が大きな変化でした。
Amazonの2000年の日本市場への進出は、当時としてはやや遅れをとっていたと言えるでしょう。2000年の進出時には、「今更感」があったという声も多かったです。私自身も、Amazonの日本進出を心待ちにしていました。当時、米国のAmazon.comで、日本では手に入らない本やDVDを購入することが多かったです。しかし、後になってみれば、これは少し無駄な出費だったと感じています。特に、ビデオの方式が異なるため、米国市場のDVDは日本の通常のDVDプレーヤーやレコーダーでは再生できませんでした。リージョンコードによる制限があるため、ソニーやパナソニックのユニバーサルDVDプレーヤーを購入し、15万円もの大金を無駄遣いした経験があります。
今となっては、私たちは非常に恵まれた状況にあります。Amazon.co.jpにアクセスすれば、ほとんどの欲しいものが見つかります。現在、Amazonは日本国内で非常に普及しており、極論を言えば、他のオンラインモールが不要に思えるほどです。企業だけでなく消費者も、どのように効率的に商品を購入するかを学び、オンラインショッピングの方法が大きく進化しました。これは、過去の混沌とした時代からの大きな変化であり、現代のオンラインショッピングの利便性を象徴しています。Amazonの日本市場への進出は、消費者行動における大きな転換点となりました。
Amazonの最大の武器は書籍の販売
Amazonの成功の背後には、強力な戦略がありました。特に、彼らが最初に手掛けたのが「本」の販売です。この選択は、Amazonの成長にとって非常に重要でした。本を頻繁に購入する人々は、一般的に生活に余裕があったり、向上心が高かったり、知的好奇心に富んでいる人たちです。彼らはしっかりとした所得を得て、購買力があります。私自身も、大学を卒業して初めて働いた時は給料が少なく、1冊の本を買うのさえ大変でした。当時は1冊の本が5万円から10万円ぐらいの価値があるように感じられたほどです。
Amazonは、向上心が高かったり、知的好奇心に富んでいる人たちを顧客として惹きつけました。彼らが本を購入することにより、Amazonはすぐに多くの顧客を獲得し、その後他の商品カテゴリへの拡大を容易にしました。Amazonが本から始めたことは、顧客層の確立と市場への浸透において非常に効果的だったと言えます。この戦略は、Amazonが日本市場で急速に普及し、他の多くの商品カテゴリーに拡大していく基盤を築くための重要なステップでした。日本市場への後発での進出にもかかわらず、Amazonは大きな成長を遂げて、オンラインショッピング業界におけるその影響力を拡大しています。
CDやDVD、そしてあらゆるものを販売するAmazon
Amazonは書籍販売で成功を収めた次に、CDやDVDの販売にも手を広げました。当時、CDやDVDは一般的に購入するよりもレンタルすることが多かったです。私自身も、TSUTAYAや他のレンタルビデオ店の会員でした。しかし、購入をしたくてもお金が無くて購入できないという状況にあった人々が多かったのです。
私にとってレンタルの一番の煩わしさは、返却に行くことでした。自転車、バイク、車、あるいは徒歩で店に向かう必要がありました。そして、返却しようとする日に限って、何かと忙しくなったり、見たいテレビ番組があったり、天候が悪かったりすることがしばしばありました。このような状況はCDやDVDの価格が下がったということもあり、Amazonがオンラインで商品を簡単に購入できるという新しい選択肢を提供することにより、大きく変わりました。Amazonは、これらのレンタルの返却の煩わしさを解消し、商品の購入を容易にすることで、多くの顧客を魅了しました。この戦略は、オンラインショッピングの新たな時代を切り開く重要な一歩となりました。
その後、Amazonは小麦粉やジュース、生活雑貨など、様々な商品を取り扱うようになりました。これらの商品が初めから売れる理由は、元々お金と時間を持っているような人たちが顧客層にいたからです。彼らはAmazonを信頼しており、その便利さにすっかり浸っています。
送料の無料化と配送期間の短縮
しかし、Amazonのこのようなビジネスモデルは、他の多くの企業に大きな影響を与えました。Amazonのように送料を無料にすることは、特に小規模な事業者にとっては非常に困難なことであり、利益がほとんど出なくなってしまう可能性があります。また、申し込んだ翌日か、その翌日には商品が届くという配送期間の短縮も画期的なものでした。
結果として、送料の無料化と配送期間の短縮ができなかった多くの企業が閉鎖を余儀なくされ、市場から消えていったのです。Amazonや楽天のような大手企業でなければ、送料無料サービスを提供することは、会社の利益を捨て、未来を危うくすることにもつながります。このように、Amazonの進出は、オンラインショッピング業界における競争の様相を一変させ、多くの既存企業にとって厳しい試練となりました。
米国企業の財務戦略
オンラインショッピングの巨人、Amazonは、特に資金運用において非常に熟練しています。彼らの節税戦略は、業界全体に大きな影響を与えています。Amazonだけでなく、GoogleやFacebookなど、GAFAMとして知られる企業群も、税金の最適化に非常に長けています。これらの企業は、ドバイやアイルランドなどの特定の国々に本社や子会社を設立し、合法的な節税手法を用いています。
一方、日本の企業は、こうしたマネーゲームにおいては米国企業に比べて劣っていると言えます。日本の企業は、消費税を含む多くの税金やコストを支払っており、特に楽天市場のような企業は、日本の税制下で運営されています。Amazonは、しばらくの間、消費税の支払いをしていなかったとされ、米国においても限られた税金を支払っていると言われています。これらの企業の節税戦略は、設備投資や優秀な人材への投資に再投資され、さらに強力なシステムの構築に役立っています。このような戦略によって、これらの企業は、競争上の優位性をさらに強化しています。
日本のオンラインショッピングモールと出店企業がすべきこと
日本の企業が国際競争において生き残るためには、これらの国際企業の戦略から学ぶ必要があります。嫉妬や恨みを持つのではなく、これらの企業から学び、適応することが重要です。
その中でも楽天グループはこれまで何度も米国を始めとする海外市場に進出しては失敗をしています。そしてそれを嘲笑している評論家のような人々もいるようです。しかしチャレンジをしなければ何も生み出すことはできません。チャレンジをする者をあざ笑うのではなく、同じ日本人として敬意を払い、声援を送るべきではないでしょうか?
日本のオンラインショッピングモールを運営する企業、そしてそこに出店している個々のECサイトを運営する企業は、日本という小さな枠組みの中だけで競い合いをして消耗するのではなく、もっと視野を海外にも向けて戦略を考える時代が来ていると言えます。それが出来て初めて日本国内でも成功出来るのではないでしょうか?